『梅干し』 数学科・情報科教員 千葉 朋陽
「釣り人は梅のおにぎり食べちゃダメよ〜」
随分と前の話しだが、釣り場で出会った先輩釣り人に言われた。
おにぎりの具は、鮭と梅干しが一番だと思っている。特に鮭は世界一好きな魚なので、自分でも釣る程大好きだ。梅干しは、少し甘い物が好きだ。だから、先輩釣り人に言われた言葉が気になって、理由を聞いてみた。意外な答えが返ってきた。
「当たらないからだ」
勿論「当たらない」のは「食当たり」の事だ。しかし、釣り人はここに験(げん)を担いだのだろう。釣り人にとって「当たらない」のは致命傷だ。「当たらない」は「釣れない」を意味する。繊細な「当たり」をとるために、道具にもこだわってきた。ロッド、リール、ライン等もそれなりに慎重に選んで購入している。でも、その時は気にしてなかった。魚がいるところで釣りをすればいいと考えていたからだ。
それから何年かして、僕は弓道部の顧問なった。自分でも弓をひく程大好きだ。毎年3回、自分も大会に参加をしている。こんなに素晴らしい競技にもっと早く出会えればよかったと思う。僕の通っていた高校にも弓道部があったからだ。
的中(当たり)も大切だが、体配(作法)も大事なのが弓道だ。一つ一つの動作を丁寧に取り組んでいる。本当に奥が深い競技だ。しかし、「当たらない」と弓道は勝てない。そんなとき、先輩釣り人の言葉をふと思い出してしまった…『梅干し』
それから僕は梅干しを断つ事にした。釣りも弓道も「当たらない」のは困る。僕は釣りと弓道を生涯続けると決めているので、この先梅干しは食べられないということだ。次に僕が梅干しを食べるのはいつになるのだろう?大好きな梅のおにぎり…
この問題を解決する方法は一つしかない。僕の釣りや弓道の実力が、験(げん)を担がなくても結果が残せればいいのだ。それには練習あるのみ!そのためには、まず今週末はどの海にする?ここまで力説すれば、家族は釣りに行かせてくれるに違いない。