ことばで遊ぶ、辞書の時間 〜定義当てゲームのすすめ〜 英語科教員 吉田 努
以前から公言しているが、私は辞書が好きであり、授業中にも、生徒に「辞書と友達になってほしい」という願いを持って、辞書アプリの画面を共有することが多い。英語科の教員として、これまで英語の辞書ばかりに注目してきたが、テレビ東京の番組「辞書で呑む」を観て以来、三省堂国語辞典(以下、三国とする)第八版を購入して読むようになった。授業中に国語辞典や英英辞典の定義を読み上げると、生徒から思いがけない答えや視点が返ってくることがあり、そのやり取り自体が、ことばを考える時間になっていると感じている。正解にたどり着く過程よりも、正解ではなかった時、その回答に至った理由を語り合う時間のほうが、授業では長くなることも少なくない。三国は、新語を積極的に収録する辞書として有名である。第八版の序文には次のようにある。
『この辞書は、第一にことばを映す “鏡” でありたいと考え、伝統的なことばはもとより、新語・新用法も積極的に収録しています。このことをとらえて、新語辞典か俗語辞典のようだという意見がありますが、事実とは異なります。現代語は、かたい文章語からくだけた俗語まで、さまざまなことばによって成り立っています。そのすべてを見渡し、ゆがみのない姿を写し取ることを、この辞書は目指しています。」(三省堂国語辞典 第八版 序文より抜粋)
今回の私の拙文では、上記のような編纂方針の三国第八版に収録されている語のうち、第八版になって初めて収録された語、すなわち現代語として生きがいい語を取り上げる。クイズ形式になっているので、読者の方々はぜひ紙と筆記用具を用意して続きを読んでほしい。ルールは次の通り。
(1)紙に1〜15の数字を書き、解答欄を用意する。
(2)定義を読み、定義されている語を書く。漢字が書けなくても問題ないこととする。
(3)15番まで解答したら、最後にある解答を見て答え合わせをする。
辞書を読み楽しむことは、世界を理解し、出来事や感情をより正確に描写するための力を育てることにつながる。自分の考えや気持ちを、安易にひとまとめにせず、ことばを通して丁寧に捉え直すことは、これからの時代を生きる上でも大切な姿勢だろう。これを機に、辞書と遊ぶ時間を楽しんでいただけたら幸いである。
*以下、定義文(三省堂国語辞典 第八版より引用)*
(1) おおぜいでやれば、悪いことでも堂々とできるものだ。
(2) 皿に盛ったものを何人かで食べているとき、たまたま最後まで残った一個。おたがいに食べるのを遠慮する。
(3) 失敗のない無難な方法をとる。
(4) すべてが そうだとは限らないのに、ひとまとめに論じられている状態だ。
(5) 〔作品の舞台など〕あこがれの場所をおとずれること。
(6) あけると、行きたい場所に行けるドア。
(7) 〔俗〕とりあえず。
(8) 〔俗〕それまでの流れからは考えられないこと。
(9) 〔俗〕二人で一人であるかのように、仲がいいこと。
(10) 〔俗〕一瞬で。すぐに。
(11) 才能・幸運などに めぐまれている。
(12) (最後に出てくる)一番の大物や難関。
(13) テレビやネット放送を〔録画ではなく〕実際の放送時間に見ること。
(14) 〔俗〕明るくはずんだ気持ちであるようす。
(15) もしかすると。
*以下、解答*
解答
(1) 赤信号みんなで渡ればこわくない[慣用句]〔一九八〇年に、漫才コンビのツービートが広めた〕
(2) えんりょのかたまり[遠慮のかたまり]⦅名⦆〔関西でよく使う言い方。関東では「一個残し」 「一つ残し」とも〕
(3) おきにいく[置きに行く]⦅自五⦆
(4) 主語が大きい[慣用句]〔二〇〇八年に例があり、二〇一〇年代に広まった用法。論法自体は昔からある〕
(5) せいちじゅんれい[聖地巡礼]⦅名⦆〔二十一世紀になって特に広まった用法〕
(6) どこでもドア⦅名⦆[由来]藤子・F・不二雄の漫画「ドラえもん」に出てくる道具から。
(7) とりま⦅副⦆
(8) ななめうえ[斜め上]⦅名⦆〔一九九五年、冨樫義博の漫画「レベルE」から出た ことばで、二十一世紀になって広まった〕
(9) にこいち[ニコイチ]⦅名⦆〔=二個一〕 〔二十一世紀になって広まった ことば〕
[由来]もと、ぬすんだ車に廃車のナンバーをつけて売る車のこと。
(10) びょうで[秒で]⦅副⦆〔二〇一〇年代からの ことば〕
(11) もってる[持ってる]⦅自下一⦆〔二〇一〇年ごろから広まった ことば〕
(12) ラスボス⦅名⦆〔←ラスト ボス〕〔二〇一〇年代に広まった用法。〕
(13) リアタイ⦅名・他サ⦆〔←リアル タイム〕
(14) るんるん⦅副・自サ⦆[由来]歌のスキャットのランラン、ルンルンから。テレビアニメ「花の子ルンルン」(一九七九~八〇年放送)なども影響したか。
(15) ワンチャン〔←ワン チャンス〕〔二〇一〇年代に広まった ことば。〕