「ことばのリズム 」国語教員 蔵本博史
古池や 蛙飛び込む 水の音
みなさんご存じの松尾芭蕉の俳句です。五・七・五のリズム感がいいですよね。俳句はこの十七音でできていますが、日本語はどうもこの五や七の音が心地よく感じるようにできているようです。
こんなことを意識したのは、最近、授業で連歌を作り、発表してもらったからです。連歌は初めに五・七・五の句を用意し、そこに別の作者が七・七の句をつなげ、その後も五七五、七七、五七五……とつなげていく複数の作者による合作文学です。授業で聞いて、あらためてこの定型は響きがいいなあ、と感じました。
すると、実は本校の校歌もそうだと教わりました。ためしに1番の歌詞を上げてみます。(わかりやすく、すべてひらがなにしています)
きたのそらなる⑦ おおぼしは⑤
いずこのくまをも⑧ てらすらん⑤
ふみのみなかみ⑦ むすぶての⑤
しずくごとにぞ⑦ かげはみえける⑦
なるほど、ほぼ七五調です。耳なじみがいいのはそういうことか、と一人で腑に落ちました。校歌と言われて自分の頭に浮かぶのは、この曲と出身高校の二曲だけなのですが、もしやと思い返してみると、そちらもやはり七五調でした。
これはと思い、あれこれみると思いのほかたくさんあります。元素記号の語呂合わせで有名な「水平リーベ⑦/僕の船⑤」もそうですし、かつてテレビCMでよく流れたコンビニのキャッチコピー「セブンイレブン⑦、いい気分⑦」もそうでした。とくに後者は「~ブン、…分」と最後の音を揃えたうえ、曲に載せているのでなおさら印象的です。曲と言えば、アニメソングの「残酷な天使のテーゼ」はテレビ番組の曲解説で、五七調の多用が指摘されていたようです。
そんな中でも印象的だったのは、有名なタワーレコードの「No Music,No Life」です。今でも一向に古びない傑作コピーだと思いますが、日本語に起こすと「ノーミュージック、ノーライフ」となり、七五調になります。(長音「ー」や促音「ッ」はそれぞれ1音と数え、「ミュ」はまとめて1音と数えます)
もちろん意味的にも、音楽に携わる企業としての哲学を端的に示す素晴らしいコピーだと思うのですが、言葉の響きにおいても英語のみならず日本語としても語呂がいい、長年愛されるべくして愛される作品なのだと、あらためて感心させられました。
こんな感じで私たちの身の回りにはたくさんの七五調や五七調の表現があります。みなさんもふと見かけたら、口ずさんでみてください。リズムの良さが響くと思います。