「問い続けること、つながること」 国語教員 蔵本博史
みなさん付箋、使ってますよね?
私はポストイットという名前で先に知ったので、正直付箋よりもこちらの方がなじみ深いのですが、最近その誕生にまつわるエピソードを偶然耳にしました。キリスト教とも微妙に関わっていたようなので、ここで紹介するのもいいかと思った次第です。
ただ少し心配だったのは有名な話らしいので、ご存じの方が多いかもしれないということでした。ですが、私のように知らない者にとっては興味深い話と思われましたので、ご存じない方は、よろしければお付き合いください。
このポストイットはアメリカのあるメーカーから生まれたものですが、始めからああいう文房具を作ろうとしたわけではなかったそうです。始めにできたのは、付箋とただのメモ用紙を分ける、貼れるけどきれいに剥がせるあの接着剤。元々は強力な接着剤を作る過程の、偶然の副産物でした。当初の目的からは失敗作とも言えますが、開発者のシルバーさんは、この特殊な接着剤には使い道がきっとある、と考え、それ以降、活用のアイデアを周囲に粘り強く聞き続けたのです。
それから6年後の 1974 年。シルバーさんの同僚フライさんは、教会で歌う予定の賛美歌に、しおり代わりの紙を挟んでいました。それがふと落ちてしまい、毎度のことながら剥がれなければいいのに、と思ったそのとき、シルバーさんの接着剤が頭に浮かびました。
ここから2人は開発を始め、紆余曲折を経ながら1980年に正式に販売されました。日本でも翌 81 年から売り出され、今やどれだけ日常に溶け込んだかは言うまでもありません。
シルバーさんは失敗作の使い道を問い続けました。答えが得られる保証はありません。しかし問い続けた結果、6 年という長い歳月を経て、答えを得ました。しかし、その答えは同僚であるフライさんが見つけてくれたものでした。ですが、フライさんが答えを見つけたのは、シルバーさんの話があってこそ。
シルバーさんは問いを分かち合うことで答えを見つけ、フライさんはシルバーさんの問いから物は落ちるという常識を放置せず、落ちるしおりを解決できる課題と見いだしました。
この話は 2 人の持つ様々なものがかみ合い、幸福な結末を迎えました。そこにはもちろん偶然が引き寄せた要素も多分に含まれるのでしょうが、その偶然を偶然として済ませなかった多くのなにかがあるように感じました。みなさんはいかがでしょうか。