早いもので2025年度も前期の終業礼拝を迎えます。皆さんにとって、前期にはどんな出来事がありましたか。
私にとって、一番印象深い出来事を紹介したいと思います。
夏季休暇中の8月上旬のある日、スマホにショートメールが届きました。
送り主は高校時代の部活動の顧問でもあり、大学卒業後に福岡で教員をしていた6年の間に、公私にわたってお世話になった恩師でした。
私の郷里は福岡県で、高校を卒業するまで福岡で過ごし、高校では入学と同時にレスリング部に入部しました。当時はほとんどの選手が高校から競技を始めること、他の競技に比べて競技人口が決して多くはないのでインターハイなどの全国大会への出場機会にめぐまれていること、階級制の競技のため体重差によるハンディがないこと、そして1988年に開催された韓国でのソウルオリンピック大会の日本代表候補でもある顧問の指導が受けられることが入部の理由でした。
当時の顧問は、レスリングの競技力は言うまでもなく、長距離走では部員に一切負けることがなく、高校の体育館の天井から床まで吊り下げられていたロープ(綱引き用のロープを吊り下げたもの)を両腕だけで軽々と3往復できる筋力を身につけていました。
また、考え方が常にポジティブな方です。今でも時々思い出す言葉がたくさんあります。
「レスリングは、頭脳8割、体力2割」
「誰でも1日は24時間。その24時間をどう使うのかは自分次第」
「2時間の練習時間を嫌々やっても2時間、よし集中して出し切ろうとやっても2時間」
「追い込まれたときに必ず本当の自分が出るよ。いつも追い込まれた時、追い込まれた自分を意識して取り組もう」
「勝ったら勝った時、負けたら負けた時」
「高校3年間だけ強ければよい、勝てばいいのではないよ。これから先の人生で何があるか分からないよ。その人生を生き抜く、あるいは乗り越えていくことのほうがもっと大切だよ。本当にいろんなことがあるから。そのためにもマナーや謙虚さを忘れたらダメなんだよ」
また、行動力も半端な方ではありません。今回の札幌訪問は、定年退職後に購入したキャンピングカーを運転して奥様と二人で福岡から陸路とフェリーを利用しての往復旅行だったのです。
恩師からの「今、札幌に来ています。一緒に食事でもどうですか。」とのお誘いのメールでしたので、早速電話をかけて、顧問ご夫妻と私と私の家族も一緒に食事をすることになりました。
最後にお会いしてから約20年ぶりの再会でしたが、高校時代や福岡での教員生活の話が尽きることはありませんでした。高校時代の厳しいトレーニングや強化合宿に県外への遠征、福岡県大会決勝や九州大会決勝などの重要な試合でミスを重ねてしまい勝利できなかったこと、練習をサボっていることがバレてしまい長時間にわたって怒られたこと、などの失敗談が次々と披露されました。
恩師の話術もあいまって終始笑いが絶えませんでしたが、テーブルを囲んでいる3人の息子たちが時折、真剣な表情で恩師の話や私の失敗談を聞いている様子を見ているうちに、不思議と心がどんどん軽くなっていき、どこか晴れ晴れとした心持になり、心が豊かに満たされていきました。これまでに感じたことがない感覚でした。
高校を卒業して37年経ちますが、この夏の恩師との再会により
「失敗は、決して失敗のための失敗ではなく、時には自分の人生を豊かにしてくれる失敗でもある」ことを再認識することができました。