「自塑像」 美術教諭 波田浩司
中学1年生の美術では、夏休み明けから粘土で自分の顔を制作する「自塑像」に取り組みます。その準備として、現在は自分の顔を鏡で見ながら鉛筆によるデッサンを行っています。
まず大切になるのは、「どのような思いを込めて作品をつくるのか」というテーマです。
例えば、
- 力いっぱい挑戦している顔
- 爽やかな気持ちの顔
- おいしそうなにおいを嗅いでいる顔
- 集中して物事に取り組んでいる顔
など、表情にはそれぞれの思いや個性が表れます。
しかし、生徒たちはまず「どのように描けばよいのだろう」と悩みます。顔は単純な形ではなく、目や鼻、口の位置や比率、骨格や筋肉の構造、眼球が収まる眼窩(がんか)などの立体的な仕組みを理解しながら表現しなければなりません。
顔のパーツの輪郭を描くところまでは比較的順調に進みますが、多くの生徒が苦手とするのが「陰影」の表現です。
4月にはオリヅルランの鉛筆デッサンを行いました。その際、
「葉や植木鉢、布の模様をすべて同じ筆圧で描くと平面的に見えてしまう」
ということを学びました。
立体感を生み出すためには、濃淡の変化や前後関係を表現することが必要です。この学習を、自画像にも生かしてほしいと思っています。
例えば顔では、鼻筋から頬骨へ続く面の変化や、眼球とまぶた、おでこの位置関係を表現するために陰影が欠かせません。ただ暗く塗るだけではなく、「どこが手前で、どこが奥にあるのか」という前後関係を考えながら描く必要があります。
オリヅルランの葉を例にすると、一番手前に見える葉は強い筆圧で描きます。また、一枚の葉の中にも微妙な起伏や前後の位置関係があり、その変化に応じて濃淡をつけます。植木鉢も中央部分は手前に出て見え、左右は奥へ回り込むので、描き方を変えなければなりません。
顔も同様です。まぶたの中央部分は比較的強く表現され、下まぶたには陰が生まれます。さらに鼻は顔の中で最も前に出ている部分の一つなので、鼻の下には強い陰影や影ができます。上唇の中央部分も左右に比べると立体感があり、それに応じた陰影が必要になります。
このように、形や構造を理解しながら陰影を描き、その上で自分の思いや表情を作品に込めていくことが大切です。
また、立体作品にする段階では、正面だけではなく、側面や上から見た形も観察しなければなりません。写真や鏡を活用したり、友達同士で頭部を観察したりしながら、少しずつ粘土で形をつくっていきます。
制作期間は8月から1月までを予定しています。時間をかけて試行錯誤しながら作品を完成させ、3月には渡り廊下への展示を予定しています。
生徒一人一人が、自分自身と向き合いながらどのような表情をつくり上げるのか、そして作品にどのような思いを込めるのか、今からとても楽しみです。