校長・教員ブログ
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今年の夏に、第1実験室に長く住んでいたピラニアの『ピラコ』がお亡くなりになりました。休みの日に締め切った部屋の温度が30度を超え、お年を召したピラコには耐えられなかったようです。最近救急車の音をよく耳にします。お年寄りが増え、暑さ寒さや気温の激しい変化に耐えられなくなってきているのでは心配します。
ピラコが北星に来て10年ほどになるでしょうか。最初は数センチの小魚でした。はじめは3兄弟(姉妹?)でしたが、休み中に自動エサやり機がうまく作動せず、2匹が食料となりました。最後に残ったピラコは他の2匹の命を授かっていると思い大切に育てました。銀色でピラニアらしさが感じられなかった小魚が、やがて赤い模様と金色のうろこを備えた美しいピラニアに育ちました。長期休み中のエサは、水が腐らないように生餌にしました。10日以上餌やりに来れないときは、金魚を10匹水槽に入れました。午前中に入れた金魚10匹が、その日の帰りに1匹もいなくなっていたときは驚愕しました。20㎝くらいの体のどこに10匹の金魚が入ったのでしょう。
ピラコが来たばかりのころは、ピラニアを学校で飼うことに対して反発や不安の声がありました。ピラニアは怖い、危ないというイメージが強かったためです。実際のピラニアは、アマゾンでは食べる側より食べられる側に位置し、大変臆病な魚です。神経質で、はじめは草陰からじっとこちらの様子をうかがっていて、餌を上げてもなかなか出てきてくれませんでした。しかし多くの生徒たちに可愛がられ、水槽の手前に来て交流できるようにまでなりました。こちらが捕まえようとしたら、もしかしたら反撃するかもしれません。しかし10年間毎週のように水槽に手を入れて掃除をしていましたが、襲い掛かってきたことはありません。声をかけるとパタパタとからだを振ってこたえてくれるまで信頼関係ができたことをうれしく思いました。学校説明会では、見学ツアーで観光名所になっていました。ピラニアを飼っている学校はなかなかないのでしょう。不安に思う方もいましたが、ピラニアは臆病な魚で、いつも水槽に手を入れて掃除しても大丈夫ですと説明したら驚かれました。
ピラコが水槽に沈んでいた時、多くの生徒が心配して声をかけてくれました。荒く息をしたまま1日頑張ったのですが、次の日の朝に動かなくなりました。ピラコがいなくなり、がらんとした水槽はひどく寂しく、いつのまにかピラコが大きな存在になっていたことに気づきました。
生き物との関わりは不思議なもので、こちらが関わらないと相手もこちらに対して特に関心を示しませんが、こちらの関わり方によって思ってもいなかったような顔を見せてくれます。逆に言えば、人の影響力は計り知れないもので、その生き物の在り方まで変えてしまう力があるのかもしれません。いつも肩にのせて一緒に散歩していたインコ、夜中に起こしに来て、手に乗っていきたい方向を向くハムスター、可愛いと言われると可愛いポーズをとるウサギ、餌をもらうために頭を撫でさせに来るウーパールーパー…他の人から見ると信じられないような動物たちを多く目にしてきました。人も人との関わりの中でいくらでも変わっていける可能性を持っているのではないでしょうか。