「ディズニーシーで地質学?」 理科教員 長嶺 幸芽
皆さんは、東京ディズニーシーへ行ったことがありますか?
私はディズニーリゾートが好きで、東京ディズニーシーへ何度も足を運んでいます。もちろんアトラクションも楽しみますが、私が特に好きなのは、パークの景観や建物、そこに置かれている小道具などを眺めながら歩くことです。ディズニーのパークを歩いていると、「こんなところまで作り込んでいるの?」と驚かされることがよくあります。一見すると気づかないようなところにも、その場所の世界観に合わせた細かな設定があります。私は、そうした「気づかなくても楽しめるけれど、気づくともっと面白い」というディズニーのこだわりが大好きです。
そして、理科の教員になってから、特に気になるようになったものがあります。それが、ディズニーシーの中央にそびえる「プロメテウス火山」です。高さ51mの人工火山で、もちろん本物の火山ではありません。ところが、地質学の視点から見てみると、この山には驚くほど細かなこだわりが詰め込まれています。例えば、北側の火山は、火口湖をもつ「タフリング」と呼ばれる火山をモデルにした形になっています。火口内の崖には、マグマと海水が触れ合うことで起こる爆発的な噴火によってできる「火砕サージ堆積物」によく似た地層まで再現されています。さらに、人工の噴気や間欠泉、溶岩トンネル、柱状節理などが表現され、南側には「パホイホイ溶岩」と呼ばれる、表面がなめらかな溶岩流まで再現されています。火口付近の防護ネットには、火山から飛び出した岩石を表す「火山弾」まで引っかかっています。ここまで来ると、単なる「火山っぽい景観」ではありません。本物の火山がどのような現象を経て現在の姿になったのか、その過程まで想像できるような造りになっているのです。
パークを訪れる人の多くは、プロメテウス火山を「ディズニーシーらしい景色」として眺めていると思います。私自身も、これまではその一人でした。ところが、地質学の視点から見てみると、その景色の中にはたくさんの知識が詰め込まれていることが分かります。知らなくても世界観を楽しめて、知れば知るほど「なるほど!」と思える。そこまで考えて作られていることに、ディズニーのすごさを感じます。
私は理科を教えていますが、こうしたものを見ると、知識は「覚えて終わり」ではないのだと改めて思います。火山について少し知っているだけで、岩肌や地層、溶岩の表現に気づき、「これは何を表しているのだろう?」と、さらに知りたくなります。ディズニーシーには、地質学に限らず、歴史や建築、文化など、さまざまな分野の「こだわり」が隠れているのだと思います。
次にディズニーシーを訪れるときには、プロメテウス火山を少し違った角度から眺めてみたいと思います。そして皆さんも、もし訪れる機会があれば、ぜひ一度「理科の視点」からプロメテウス火山を眺めてみてください。夢の世界の中に、地球科学の世界が隠れているかもしれません。