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校長・教員ブログ

校長・教員ブログ  2020.06

Stay Home期間にSNS上で”My book cover challenge”なるものが回ってきました。1週間、毎日本を1冊ずつ紹介し、その都度1人の友だちにバトンを渡すというものです。忙しさや視力の衰えとともに最近ではすっかり読書から遠ざかっていたので、学生の頃読んだ小説やエッセー、勤めてからの朝読書用文庫本などを引っ張り出して本選びを始めました。

色々悩んだ末、私が選んだのは絵本でした。最近は話をすることも少なくなってしまった中3の息子に、幼い頃読み聞かせていたものです。数年前にかなり処分しましたが、私が大好きな絵本はどうしても捨てられず残してありました。読み返すと、当時の息子とのほのぼのとした時間が蘇ります。

 

「おこだでませんように」 くすのきしげのり・作  石井聖岳・絵

   家でも学校でも、いつも怒られてばかりの男の子。悪気はないのに、不器用なだけなのに、いつ  も怒られて、悔しくて悲しい思いをしています。そんな男の子が、七夕の短冊に「早く書きなさい!」と怒られながら一生懸命書いた願いごとが「おこだでませんように」。それを見て涙を浮かべて謝り、ほめてくれた先生。話を聞いて泣きながらぎゅうっと抱きしめたおかあさん。私も息子に「何をしても怒られる!」と言われることがよくありました。親はそんなつもりはなくても、子どもはそんなふうに思っているのかと思うと、読むたびに泣けてきます。

 

「よるくま」 酒井駒子

   小さな男の子の夢の中に現れたくまのこ・よるくまが、目を覚ますといなくなっていたおかあさんを探しています。男の子も一緒に探し回りますがどこにもいません。「おかあさんは?おかあさんは?」と泣くよるくま。真っ黒なよるくまの涙であたりはどんどん暗くなって、真っ暗になって…そこにおかあさん!「おかあさん、どこにいってたの?」と抱きつくよるくまの表情がツボです。おかあさんにお布団をかけてもらって安心して眠りにつくよるくまと男の子。だよね、だよね、本当はきっとこんなふうにおかあさんのこと大好きだよね?と思わせてくれるのです。

 

「はしるチンチン」 しりあがり寿

   シュールな作風の漫画で知られる作者の初の絵本。まさに「コドモそのもの」の3歳の男の子がフルチンで世界を駆け抜けます。苦しんだり悩んだりしているオトナに生きる希望ややり直す意欲を与え、世界中の争いや平和、不幸や幸福を目にしながらどんどん進んで行きます。やがて「スキスキダイスキ」は「うまれてくれてアリガトウ」という意味なんだと知った男の子は大きな「スキスキダイスキ」に包まれて…最後は温かなおかあさんの腕の中に戻ります。

 

 素直に大人の言うことを聞きたくないお年頃。悩まされることも多いけど、やっぱり「スキスキダイスキ」なんですよね。すべてのお父さん、お母さんもきっと同じ気持ちのはず。子どもたちにその気持ちが届きますように。

 

20200620
「歩き始めること」

3か月以上の学校閉鎖の後学校が再開しました。先週からは部活動も始まりました。
少しずつ学校が動き始めているのを感じます。校舎に響く生徒の声を聞くとそのことを実感します。

75年程前、私たちの学校は他の学校以上に大きな苦難を経験した第二次世界大戦の時にも、
これほど長期間学校を完全に閉じたことはありませんでした。
二三日の休みは多少嬉しさもあるかもしれませんが、このような長い間、
生徒が登校し、先生が授業する。そして部活に汗を流すことができない期間が来るとは、
数か月前には誰も想像できませんでした。
学校に生徒が登校し勉強することがこんなに待ち遠しいと思ったことはなかったかもしれません。

日本国内だけでなく恐らく世界中の中学生高校生の学校生活が急停止してしまいました。
このような状況になる以前に自分なりに考え、準備や計画を立てていた生徒たちの心を思うと、
簡単に「残念だったね」のような言葉では慰めることはできない思いです。
生徒たちから「どうしてこんなことになるの?」「もうやってられない。」
「もう考えられない」という声が聞こえてきても不思議ではありません。

そのようなことを思っていた時、私たちの学校の創立者スミス先生の言葉
Forget the past, labor for the present, looking for the future.”が頭に浮かびました。
スミス先生は困難にあった時にこの言葉を生徒に、教員に、そして自分自身に語りました。

「過ぎ去ったことにとらわれず、今を精一杯生きて、未来を切り拓きなさい」
その意味の深さを今一度知る時間を過ごしています。

一世紀以上前からこの言葉に元気づけられた生徒や先生が、
前に向かって進み始めた姿を思い浮かべると勇気が与えられます。

一年後、本校の生徒たちが今と同じ場所に立ち尽くしているのではなく、
新たな目標に向かって歩き始めていることを信じています。
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星空を見上げるのは好きですか?私は晴れた夜、よく空を見ています。

最近はスマホアプリが進化していて、空に向けるとその方角にある星座をリアルタイムで表示してくれたり、流星が流れる方向を教えてくれたりするものもあるんです。これを使って、首がしびれるまで、星空を見るのが好きです。

138億年前、空間も時間も存在しない「無」から生まれ、今も遠いところでは光のスピードより速く広がっているとも言われている宇宙ですが、例えばペリドットという宝石の雨が降っている星があったり、1秒にワイン500本分のアルコールを噴きだし続ける彗星があったり…想像をはるかに超えた世界です。

人間はその昔から、宇宙に想いを馳せ、いろいろな想像や観察をして、宇宙を解きあかそうとしてきました。星を結んで星座とし、星の動きから地球の動きを考え、遠い世界にどんなものがあるんだろう、何がいるんだろうと長い間考えてきたのです。宇宙のどこかで、何かしらの生きものが、自分と同じように空を見上げているかもしれない、なんて思うとわくわくしませんか?ひょっとすると、生きものの定義も地球とは違うかもしれませんが、宇宙の誰かに向けて、人間は人の姿や太陽系の模式図を記録した金属板や、数字などの情報を載せた電波を送ったことがあります。1977年には、人間の生活の様子などを撮ったたくさんの画像や、様々な国の言語、それから音楽といったメッセージをレコードに詰め込んで、ボイジャーに載せて打ち上げました。地球にいる人間という存在を、どこかの星で生きている誰かに知らせ、コミュニケーションを図ろうとしたのです。まだ返事はないようですが、地球に一番近い、太陽以外の恒星に到着するまででさえも、4万年かかるほどに宇宙は広いので、遠い未来に私たちの子孫が、誰かからの返事を受けとってくれるかもしれませんね。

星空を見ながらそんなことを考えていると、私は宇宙のなかの自分という存在の小ささに、尚更はっきりと気づかされます。心が落ち着き、何だか荘厳な気持ちになり、癒される感じがしてくるのです。自分が夜空を見ているそのとき、どこかで誰かが同じように空を見上げているかもしれないし、遠い昔、自分がいるまさにその場所で、誰かが星空に想いを巡らせていたかもしれません。

皆さんも、今夜もし晴れたら、星空を眺めてみませんか?

英語力の向上のために、私が一番お勧めする方法は「多読」です。「多読」とは文字通り、自分の英語レベルに合った本を数多く読むことです。私の姪二人は海外でインターナショナルスクールに通っていましたが、学校登校初日から出された宿題が「多読」でした。とにかく、たくさんの洋書を読むことが毎日求められました。

 

「多読」の良いところは、英語の本には場面描写や状況説明の文語的な英語と、登場人物のやり取りの口語的な英語が混在していて、読書を楽しみながら専門的な英語と日常的な英語が同時に身につくことです。

 

私が初めて読んだペーパーバックはシドニー・シェルダンの「The Sands of Time(時間の砂)」でした。平易な英語で書かれているので、多読初心者でも意外とすんなり読めますよ。彼を含めて、ペーパーバック初心者にお勧めの作家を紹介します。

 

Sydney Sheldon(シドニー・シェルダン)

彼は一時期一世を風靡したアメリカ出身のベストセラー作家で、「Master of the Game(ゲームの達人)」や「The Other Side of Midnight(真夜中は別の顔)」は日本でドラマ化もされました。息をつかせぬ大どんでん返しの連続で、一度読みだすと止まりません。女性を主人公にしたサクセスストーリーが多いので、皆さんもきっと感情移入できると思います。

 Sydney Sheldon① Sydney Sheldon②

 

 

 

 

 

 

Danielle Steel(ダニエル・スティール)

シドニー・シェルダンと並んで世界的に人気のアメリカ出身の女性作家で、日常生活に起こるふとした出来事を題材にしており、読むとほっこりして癒されます。この作家も女性を主人公にした作品が多く、また英語も平易なので、シドニー・シェルダンと並んでペーパーバック初心者にお勧めです。どちらの作家の作品もEnglish Loungeにたくさんありますので、ぜひ読んでみてください。

 Danielle Steel

 

 

 

 

 

Liane Moriarty(リアン・モリアーティ)

彼女も世界的に有名な作家で、ニコール・キッドマン主演の大ヒットドラマ「Big Little Lies(ささやかで大きな嘘)」の著者です。このドラマはAmazonプライムビデオでも配信中なので、本を読んだ後にドラマと比べてみるのも楽しいと思います。彼女は登場人物の描写がとても上手で、読みながらまるで映像を見ているかのようです。ミステリー要素も軽く含まれていて、どの作品も楽しめます。オーストラリア出身なので、前出二人のアメリカ人作家との英語の違いを比べてみるのも面白いと思いますよ。

 Liane Moriarty① Lian Moriarty②

 

 

 

 

 

 

Dan Brown(ダン・ブラウン)

アメリカ出身の作家で、宗教象徴学者ロバート・ラングドンを主人公に描いた「The Da Vinci Code(ダビンチ・コード)」、「Angels & Demons(天使と悪魔)」、「Inferno(インフェルノ)」は、トム・ハンクス主演で映画化されました。キリスト教の知識が少しあれば、英語も比較的平易なので十分楽しめると思います。彼の作品もEnglish Loungeにありますので、ぜひ読んでみてください。

 Dan Brown② Dan Brown①

 

 

 

 

最近読んだ中で一番面白かったのが、イギリス出身の作家Alex Michaelides(アレックス・マイクリーディーズ)のデビュー作、「The Silent Patient(サイコセラピスト)」です。あらすじは、『画家のアリシアは写真家の夫と幸せな結婚生活を送っていたが、ある晩、彼女は仕事を終えて帰宅した夫を銃殺し、それ以来一言も言葉を発しなくなる。一方、司法心理療法士のセオは、自分ならアリシアの心を開かせることができると信じ、アリシアがいる精神科施設に転職する。なぜ彼女は夫を撃ったのか、なぜ口を利かなくなったのか、セオは解明に乗り出す』、というお話です。あとは読んでのお楽しみです。この作家の第2作が待ち遠しいです。英語も比較的平易なので一気に読めますよ。

 

他にもJeffrey Archer, Lee Child, David Baldacchi, Harlan Coben, John Hart, Lawrence Block, Michael Connelly, Celeste Ng, Kazuo Ishiguroなどたくさんお勧めの作家がいます。

 

【在校生の皆さんへ】

英文学の作家について、もっと知りたい人はぜひ私のところに来てくださいね。普通科の生徒は授業で「多読」をする機会がありませんが、簡単に借りられますので、興味のある人は英語科の先生に声をかけてください。

 言葉はすごくて面白い。毎日、そんなことを実感しながら暮らしている。教科書に出てくる作品や、本を読む中で出会った言葉に対して思うこともあるし、うちに帰ってから息子たちと話をしている中で出てくる面白発言(言い間違い)に出会って思わずメモするときなんかにも。紹介したい言葉のすごさ、面白さは山ほどあるが、中でも私が強烈にそれを感じたことを今回はお話したい。

 大学3年生だったと思う。普段、何気なく使っていることわざの由来が、ふと気になった。それは「ミイラ取りがミイラになる」。辞書の意味からすれば「人を連れ戻しに行ったものが、先方にとどまって帰ってこられなくなる」というものである。ニュアンスはわかるし、使い方もわかるが、はて?ミイラって……エジプトのピラミッドの中にいる、あれでしょ? ミイラ取りって、じゃあ、ピラミッドに入る盗人? ん? ちょっと待て、ミイラって、死んだ王様とかに薬とか油とか塗って作るんだよね? 自動にミイラになるの? と、考えだすと、様々な疑問が噴出してくる。  当時はまだ、今のようなスマホで検索すればすぐに欲しい情報が手の中にやってくる時代ではなかったので、大学の図書館で調べまくってみることにした。すると……、私の想像していた世界とは全く違う、「ミイラ取り」の世界が紐解かれることになった。

 まず、ミイラには人工的なミイラ(エジプトのようなもの)と天然的なミイラ(即身仏のようなもの)があることを知った。ミイラ取りが求めたのはおそらく人工的なミイラだろう。何故かというと、エジプトのミイラは中世から18世紀ころ、ヨーロッパで鎮痛剤や強壮剤として珍重されていたらしいからだ。それが16世紀ころオランダ経由で日本にやってきた際ポルトガル語「ミルラ(mirra)」として伝わり、その薬の原料が乾燥した死体であることがわかって、薬の名称であった「ミイラ」が乾燥した死体のことを総称するようになったことなどを、芋づる式に知ることができた。  さらに調べていくと、英語でミイラは「mummy」だが、それはアラビア語の「ムミアイ」という語から派生したもので、漢字で書く際の「木乃伊」は没薬(クリスマス礼拝の際に同じみの「黄金・乳香・没薬」の没薬です)を意味するオランダ語「mummie」を漢訳したものだということも知った。

 今まで何気なく使っていた言葉の影に、実はものすごい世界が広がっていて、21世紀の情報化社会でもない時代に、世界のあちこちで一つの言葉が派生して、それぞれの土地に様々な背景を持って根付いていくことのすごさに、ミイラをきっかけに、大学の図書館のすみっこで、一人で感動したことを今でも強く覚えている。まさに、自分自身が「ミイラ取りがミイラにな」ったようであった。

 言葉はすごい。何千年も前から変わらず使われている言葉と、たった今生まれたばかりの言葉とが、たくさんの人と人をつなぐために日々使われている。自分の思いを伝えるためには言葉は必須のアイテムだ。絶対必要なら、うまく使いこなせた方が絶対いい。では、使いこなすためにはどうするか? ということを日々考えながら国語科の教員をしている。

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